風の匂いが少しずつ春を含みはじめる頃、
令和7年度という新しい時間(とき)が幕を開けました。
改めてすべての皆様へ
深い感謝と共にご挨拶を申し上げたく筆を執りました。

一年という時間のなかで
いくつもの「場」をひらき
いくつもの「声」と出会い
いくつもの「問い」を心に灯してきました。



それは、誰かと肩を並べて座る時間でもあり
声にならない気配に耳をすます瞬間でもあり
そして、目に見えないものに、目をこらす日々だったようにも思います。



わたしたちの営みは
いつもゆっくりで
いつもささやかで
世の中の「速さ」と比べれば、あまりにも不器用かもしれません。
それでも、その「遅さ」こそが
誰かのまなざしに確かに触れた瞬間の重さであり
耳を澄まし続けることでしか聴こえない声の繊細さであり
あるいは、いまを生きる人たちの心の深さそのものであると信じています。



そして、思うのです。
たった一つの言葉が、誰かの孤独をそっと照らすように
たった一つの場が、誰かの「これから」に橋をかけるように
私たちが手渡しあったもののなかに、小さな確かさが残っていることを。
それは、「成果」と呼ぶにはあまりに脆く
「形」として語るには、あまりに見えにくいものかもしれません。
社会が追い求めてくる収益的な合理性も、残念ながら形にはできていません。


けれど、10年後のどこかで誰かが「そういえばあの時」と思い出してくれるような、そんな淡い記憶のような活動を、私たちは重ねていきたいと思っています。
どんなに技術が進んでも、どんなに世界が変わっても
「ひと」と「ひと」が出会う場の力は、決して消えることはありません。





その原点に、もう一度立ち戻りながら
CARNIVAL WORKSは歩んでいきます。
焦らず、誇らず、声高に叫ばず
それでも確かにこの時代を生きる人たちと
静かに、深く、丁寧に関わり続けながら。
変わり続ける世界のなかで、
変わらずに在り続けるしなやかさを、わたしたちは信じています。
本年も、どうかよろしくお願いいたします。

小さな団体の大きすぎる挑戦をみんなと共に。
令和7年5月24日
一般社団法人CARNIVAL WORKS
代表理事 江藤大裕